刊行趣意書

写真資料集「伏見百景」刊行趣意書

京都市最多の人口、28万人が暮らす伏見。京都市民のおよそ5人に1人が伏見区に暮らしています。

今年、令和元年2019年は京都府伏見市が誕生して90周年。そして2021年には、伏見市が京都市と合併して『伏見区』が誕生して90周年を迎えます。

時代を遡ると、平安京遷都で鳥羽離宮に公家王朝文化が華やかに栄え、武家の時代天下統一を果たした太閤さんが伏見城を築いて絢爛豪華な桃山文化が花開き、その後を継いだ家康が城下町を整備し、幕府の直轄地として伏見を治め水運が発達し、幕末には坂本龍馬や新撰組が駆け抜け、明治維新を加速した鳥羽伏見の戦いで日本の夜明けが幕開き、都の移転後の混乱期には水の恩恵を受け疎水を生かした発電や酒造界の発展で近代化を成し遂げ、また軍都として栄えた後地は教育施設や病院などの充実したインフラ施設に生まれ変わり安定した現在の伏見が実現しました。

この様に、伏見は時代ごとに『歴史のターニングポイントの舞台』になり、幾多の波乱万丈の時代を乗り越えてきた歴史があり、当たり前のように歴史を伝える建物や遺構、そして受け継がれてきた行事や伝統文化が点在していますが、28万人もが暮らす広い伏見にひとつも歴史資料館が無い事情もあって、誰も容易に、一同に伏見の歴史や文化を学ぶ事が出来ません。

いま『当たり前のように見られる姿は、全てが歴史の生き証人』で、これらは先人達が受け継ぎ、苦労して繋げて来た『伏見の貴重な歴史的財産』です。

『当たり前のように存在している伏見の歴史の姿』を受け継ぐ我々も、先人達と同じように毎日新しい歴史を創造しているわけですが、果たして全てを未来に継承する事が出来るでしょうか。

多発する自然災害、高齢化や人口減少による担い手不足、経済情勢が読めない将来。

『伏見の当たり前の姿』が保全されず、いつの日か忘れ去られ、また消えて無くなってしまうかも知れない事に危惧を感じています。

2017年に開催した『伏見百景写真展』では『記憶は消えるが、記録は残る』の言葉を胸に、先人達が繋いで来た日常的に存在する伏見の歴史や伝統の姿を、一旦カメラで時を止め記録にとどめ、まず現在一緒に暮らしている人達に、『こんな伏見もあるんや』と知ってもらう事、そして『未来に継承する事の大切さを共有してもらいたい思い』で取組みました。

一方、今回の『伏見百景写真集』では、この思いを原点に、伏見を訪ねて来られる人達にも、受け継がれてきた伏見の姿や伏見市誕生時のドラマチックな舞台裏や伏見の歴史を掘り起こして新たに未来に伝えようと奮闘している人達の思いと活動内容もお伝え致します。

この写真集も一世紀も経てば古文書のひとつになるので、未来の時代において伏見の現在の姿とを比較して、これからの伏見の歴史の推移を検証して貰いたいとも思っています。

京都駅を境になかなか関心の目が向けられない京都市南部の伏見。

2021年度に文化庁が京都市に全面移転し関心の眼が益々京都に集まります。また同じ年に伏見区誕生90周年を迎える今、京都市が観光面で周辺への分散化を提唱する中、京都を訪れようとする人達にこの写真集が伏見へ誘導する手掛かりとなる事や、また伏見に暮らす人達、特に次の時代の担い手となる子供達には、町の誇りの再発見と郷土を大切にする気持ちが芽生える事を期待しながら準備を進めています。

写真集の完成時には、自分達が暮らす伏見に関する地元学習の教材用に、伏見区内の小・中学校と図書館に寄贈し、子供達を通して家族や地域へ拡大する事に期待しています。

この写真集は、専門的な学術書でも無ければ、考古学や歴史学の専門書でもありません。

ご覧頂く皆さんの中から『へェ―そうなんや!』『そんなん、伏見にあったんや!』『伏見って、意外と魅力的なまちやな!』『伏見の匂いを感じるな!』『チョット今度、子供連れて行ってみよか!』といった声が聞かれ、気軽に楽しんで見て貰える『伏見の入門書のような本』になれればいいなと思っています。

それらの声は、酒蔵や寺社仏閣などを維持継承されてきた人達や、地域に伝わる祭や伝統行事の担い手さんや、風習や伝統文化を受け継いで来られた人達にとって『励ましや応援の声』となり、次世代の人達の中にも新たに参加する人の姿が生まれるものと確信しています。

現在、先に述べた思いの実現に向け、未来に残るように国立国会図書館に収蔵される正規の書籍を目指し、約500枚の写真と、写真ごとのいわれや歴史的な説明文で構成する『資料集的な写真集』の準備を進めて参りましたが、幸運にも京都写真界の第一人者の水野克比古氏のご支援を頂き、京都の美術図書を手掛けるニューカラー写真印刷株式会社様と京都最大の大垣書店様と一緒に編集作業に取組み、また伏見区役所や地元の洛南保勝会や伏見観光協会のご協力を頂くことで実現できる運びとなりました。

しかし民間の団体が取組むには非常にハードルが高く資金面で困窮しています。誠に恐縮ですが、ご賛同いただける方、何とぞご支援を賜りますよう切にお願い申し上げます。